Platform House

終の住処としての計画
郊外の住宅地にたつ夫婦二人のための住宅。終の住処として求められ余裕のある敷地に対して要求は多くはなく、ゆとりを持った住宅として計画することができた。そのため機能が隣り合ってパズルのように構成される住宅ではなく。あいだの空間と機能をつないでいくようなのびやかな建築となるように計画している。

構成
構造としての壁が建築を物質的に支えているが、この建築を成り立たせる要素は壁と壁の間に存在する隙間である。その隙間を満たしたり通り抜ける現象。それらを受ける変化する床レベルや天井高、そして環境と建築を連続的につなぐ外部空間の構成で成り立つ。それらを包括するように大きな屋根がかかることで建築としての一体感を作る。屋根の大きさに対して道路側の軒先は低く周囲に圧迫感のないように計画している。

現象
連続的に構成されるこの建築を風や光、植物と土の香り、人の声や気配、そして季節、時間がめぐりながら通り抜けていく。様々な活動や季節折々の現象により場所の性質が浮かび上がっては変化していく。長い時間をこの住宅で過ごすことで様々な現象を目の当たりにする。現象によって自分の居場所を選び取っていくこともできる。


直接触れる庭いじり、寝室から目覚めとともに見える庭、リビングから人と一緒に眺める庭や夜に風呂から見る静かな庭春の日差しと花の香り漂う庭。バルコニーから眺める木の上には鳥の姿も確認できる。住宅の中心に庭があり、様々な季節や時間によって庭は大きく変化をする。見る場所によっても見える庭は変わってくる。内部に使ったアルミの素材の壁は優しく反射して室内にも庭をつくりだす。ぼやけた風景は古い記憶を呼び起こすかもしれない。

プラットフォーム
回廊により回遊性が生まれる庭と、持ち上げられたバルコニーは三次元的につながりを作り出す。自分の位置によって対象の見える範囲の振れ幅は大きくなる。それに伴い認識も変化していく。対象との距離や認識するスケール、そして移動から知覚の変化を生み出す。その知覚により認識される部分と全体の関係性も変わることで、場所の意味づけも変わり、それは空間の奥行が拡がっていくきっかけとなる。空間が拡がることで、固定化された境界面にゆらぎをもたらしていく、そしてそれは今まで見えてこなかった住宅における環境のグラデーションをつくりあげていく 。住宅という小さな環境であっても、この建築が基盤となることで住む人にとって感覚の幅が拡がり生活が豊かになってほしいと願っている。